「我が原点となる魂のアニメは何か」
「宇宙戦艦ヤマトだろ?」
「残念ながら原点では無いのだ」
「えー」
鉄甲巨兵 SOME-LINE §
「鉄甲巨兵 SOME-LINE!」
「それが魂のアニメなの?」
「違う。思い出深い小説であるが、まあ普通は話題にならない。オタクのネタの奔流の中で、数冊小説が出た程度のタイトルなどアッという間に忘却の彼方だ。スレイヤーズぐらい何回もアニメ化されてやっと記憶に残れる水準だろう」
「じゃあ、何?」
「さるTwitterのTLでSOME-LINEの文字を見ていったい誰が書いたのか……と思ったら作者の吉岡平先生本人であった」
「へー」
「なので、フォローしておいたが更にやってくれたよ」
「なに?」
エネルギー噴射、レイガン用意! §
http://twitter.com/#!/torinakisa/statuses/163769940808175616より
レインボー戦隊ロビン どっかでリメイクしない? ずっと前から言ってるんだけど 版権関係が 超複雑らしい
「レインボー戦隊? そんな戦隊あったっけ? 全35戦隊はゴーカイジャーに出ているはずだろ? 出てきたっけ?」
「いわゆるスーパー戦隊はゴレンジャー以降ってことになる。レインボー戦隊ロビンは、それより古いモノクロアニメだ」
「えー。もっと古いんだ」
「その通り」
「それで、やはり5色のコスチュームで変身するの?」
「しない」
「じゃあ、何をするのよ」
「意志のあるロボットの戦闘隊を率いて少年が戦うのだ」
「えー」
「そして、これこそ我が魂のアニメと言える」
行くぞ我らのレインボー戦隊 §
「でも、どうして魂のアニメといえるの? モノクロだろ? しかも技術も稚拙だろ?」
「しかし、重要なコンセプトを多数既に実現済みなのだ」
- 戦闘機からロボに変形の変形メカの先取り
- 初期のスーパー戦隊には無かった2人ヒロイン戦隊の先取り
- 7人戦隊の先取り
- 意志のある戦闘ロボットという、トランスフォーマー経由で勇者シリーズに輸入されたコンセプトの先取り
- 敵の美少女エース・パイロットという戦闘美少女の先取り
- (海賊戦隊にはハカセがいるが、レインボー戦隊には教授がいる)
「えー」
「実はオタクが自慢する新しさは何ら新しくないことも多いが、多くのオタク的コンセプトはロビン1つ出すだけで瓦解する」
「それなのに、無名なの?」
「人気はあるが、その人気はある世代から下には継承されていない」
「なぜだろう?」
「モノクロのアニメはカラー化後にはあまり再放送されない。そういうことだろうな」
誰がそれを作ったのか? §
「誰がそのコンセプトを作ったわけ?」
「スタジオ・ゼロ」
「知らない……」
「でも、おかしいと思わないか? 無名の誰かが画期的な成果を残したのは不自然では無いか?」
「確かにそうだね」
「では、スタジオ・ゼロの正体とはいったい何か」
「何なの?」
「WikiPediaによると以下のような存在だ」
スタジオ・ゼロ(1963年 - 1971年 )は、トキワ荘出身の漫画家らが設立したアニメーション、漫画の制作会社。
「伝説のトキワ荘かよ!」
「具体的な名前も書いてある」
鈴木伸一、石ノ森章太郎、つのだじろう、角田喜代一(つのだじろうの兄。電通勤務)、藤子不二雄(藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄)と一人の社員により設立、のちに赤塚不二夫も参加。
「ちょ、ちょっと待て。ビッグネームがゴロゴロいるぞ」
「特に石ノ森章太郎の名前があるので、ゴレンジャーの更に原点と見ることもできる。スーパー戦隊からまっすぐここまで線が引けてしまうのだ」
「しかも、藤子不二雄ってなんだよ」
「すこし・ふしぎ文化もここにつながる」
「ゴージャスすぎだ」
「しかし、それは言い換えれば取り扱いが難しいことを意味する。『版権関係が 超複雑らしい』となる遠因はそのあたりにあるのかもしれない。良くは知らないけどな」
「そうか」
「しかし、権利関係の問題で難しかったと言われた緯度0大作戦のDVDも出たんだ。100%不可能ってこともないのだろう。単にとてつもなくハードルが高いだけで」
リメイクはアニメかCGかVFXか §
「1つだけ言えることは、ここ数年は古いタイトルを掘り起こしてリメイクするのがブームになっていることだ。実写系でもSPACE BATTLESHIP ヤマトやらんま1/2がある。妖怪人間ベムまでリメイクされた。アニメでは、えん魔くん。CGでは009を作っているね」
「そうか。今は方法論が選べるわけで、もしリメイクするなら選択可能なバリエーションが増えるわけだね」
「ただし、注意点が1つある」
「何?」
「ロビンの戦闘描写は今のアニメとは異質なんだ」
「なぜ?」
「たぶん、従軍経験者がまだ多かった時代だからだ。従軍してなくても、敵の軍用機が飛んでいるのを見ていた世代がメインだ」
「それに意味があるの?」
「ある。技術は稚拙でもある種の凄みは今時のアニメに優越するのだ」
「そうか、今時のアニメの常識で作画しても、凄みで負けちゃう可能性があるわけだね」
「だから、虚構の戦闘を延々と作ってるスタッフよりも、中東あたりで実際の戦闘を取材してきたスタッフの方が適している可能性もある」
「屈折しているね」
「そうだ。ロビンが放送開始された1966年(昭和41年)とは、まだ太平洋戦争の空気が残っていた時代なんだ。消えつつあったとは言え、まだ残っていたんだ」
「それに意味があるの?」
「ある。なぜなら、敵のエースが女性という設定は単なるフィクションではない。実際に日本が敵対したソ連軍には女性のパイロットもいたんだ」
「ルーツはオタク文化ではないってことだね」
「そうだ。そういう凄みは停滞したオタク文化を破壊して前に進むために意味があるのだろうと思う」
「オタク文化が相対化されてしまうわけだね」
「でも、オタク文化を壊したくない、前に進みたくない人たちにはきっとウケが悪いだろう」
「ぎゃふん」
オマケ §
「結局、吉岡平先生とは割と立ち位置が近いかもしれないよ」
「レインボー戦隊なんて口走るから?」
「オタクからウケが悪いって点もな」
「なぜ?」
「だからさ。ヤマトから始まったアニメブームを平然と突破して、いくらでももっと古い話ができるんだ。ファーストガンダムまでしか遡れないオタクばかりの今、ヤマトすら射程距離外なんだよ。まして、それを突破して語られると彼らは非常に困るんだろう」
「もっと語れるの?」
「そうさ」
「何が語れるっていうのさ」
「海底3万マイルとか」
「なんだよそれ、原作ジュールベルヌかよ」
「いや、原作石ノ森章太郎。3万であって2万でも5万でもないからな」
「結局、ぐるぐるまわってまた石ノ森章太郎か!」
「じゃあ、田河水泡とか海野十三とかの話をしようか」
「もういいよ!」